海外スケッチ旅行のススメ
準備編
(0907に一部修正しました)
■今ごろの若者と違って、海外旅行といってもある歳までは会社の金で行く海外出張で、個人旅行はしたことがない。
 フイルムをたくさん持ってゆき、写真を撮りまくる。一応都市計画、建築に近いところで仕事をしているので、街並みの写真を次から次と撮る。たくさん撮るので、後から何処だったか忘れる。街に触れるというよりも、写真に触れているようなものだ。
スライドにしたり大きく引き伸ばしたりすると金もかかる。
百分の一秒の世界なので、自分の目でしっかり見たという印象がない。そのくせディテールまで写っているのがいけない。
ここを撮りたいと思ったことが必ずしもはっきりしない。これが写真の欠点である。

出張で海外旅行に行った時に、欠かさず描いていたのはホテルの部屋のプランくらいのものである。
団体旅行が多いため、ゆっくり絵を描くなど思いもしなかった。バブルの時期には、豪華なホテルに泊まり半分遊びのような旅行をしながら、あまり楽しいとは思わなかったし、心にも残っていない.

イタリア旅行の時に描いたもの。(当時は自家製のハガキサイズのスケッチノートを使っていた。最近はハガキサイズの他にF4サイズのメモノートをベースにハガキサイズのものを貼り付けたりしている)
絵を描き始めてから、女房とイタリアにツアー旅行で出かけた。(‘96年)団体ということもあり自由時間が少なく、例の文庫サイズの車中人間スケッチ用のノートに、メモ的にスケッチした。
 約300枚描いた。街並みも人間も料理もなんでも描いた。そして、地図を貼りレシートも貼り、帰ってきてから写真も貼り込んだ。しかし、少しサイズが小さすぎて不満が残った。
 同じ年に、出張でニュージーランド・オーストラリアに行った。
 この時もイタリア旅行と同じ方法でスケッチをした。不満は残ったが写真の枚数は少なくなるし、絵とともにメモもレシートもちゃんと残るし、レポートを書く段になると文字ではなく全て描き貯めたスケッチで報告できた。
 文章に写真を加えた報告よりも絵の方が面白いのか結構評判が良かった

イタリア旅行で文庫サイズのスケッチブックに描く。写真は帰宅してから貼り付ける

スケッチ帖をベースに感想旅行記を書く

 この周りから楽しく記録に残すコツを掴んできた。
そして、ついに、スケッチを目的とした旅行がしたくなり、翌年(‘97)、スペインに絵の仲間3人でスケッチ旅行に出かけた。
 次の年も楽しさが忘れられず、またまたイスタンブールに仲間と2人で5月の連休を利用してスケッチ旅行に出かけた。
 今までの旅行の数倍楽しかった。
異国の風景を描くことも楽しいが、絵を介しての出会いがまた楽しい。会話をするのは大変だけど下手な絵でも絵は万国共通。すぐに親しくなれる。
海外で描くと車中スケッチと違って、自由にのびのび描ける。 
 国内で描くのと比べ、言葉がわからないためか、後ろに人がいようと気にならずどこでも恥ずかしくもなく気楽に描ける。海外で描いたスケッチには出合いが詰まっている感じがする。
楽しいことはついつい人に説明したくなるものだ。そこで、僕の海外スケッチ旅行の準備編からはじめよう。


■  旅の準備
何を持ってゆくか、どの程度持ってゆけばいいか迷うものだ。迷いながらいろいろと考え、画材屋を捜し歩くのがまた楽しい.

  画材以外で必ず持って行くものは磁石とメジャー、セロテープ、カッターである。街をぶらぶらしてスケッチの場所を探していると自分がどこにいるか分からなくなる。地図と磁石は必携である。
 メジャーはホテルのプランなどを描く場合に寸法を測るためである。
セロテープとカッターはレシートでもメモでも雑誌の切り抜きでもその場で貼りつけるためである。後から整理しようと思ったりすると、いざ整理の段になるとさっぱり判らなくなるものだ。その場でスケッチ帳に貼り付けること。これが資料の整理のポイントだ。
  絵の道具は日々使っているものを持ってゆくことになる。僕の場合は水彩画なので簡単である

最初のページに持って行くスケッチ用具を描く
■ 
筆は大(12号)・中・小の3本で良い。
値段が高いのが難点だがセーブルを使っている。水の含みが良く実に使いやすい。細い線から太い線まで一本の筆で描けるのが良い。筆は長持ちするもの。少し値段は高くてもいいものを買っておくこと。


空港の待合室で(ギリシャへ)
■ 24色の固形絵具
もっと色の数は少なくてもいいが時間がない中で描くには24色がいい。(今は48色のものを使っているが24色で充分)
チューブ入りを最初は使っていたが固形の方が使いやすい。
 長い間ペリカンの大きい固形を使っていた。99年にドイツに行った時感じたことだが、絵具は描く国の絵具を使った方がいい気がした。ペリカンはドイツ製のため街の風景とか緑にぴったり合っていた。その国の風景にはその国の絵具、日本の風景には日本製の絵具がいいのかなと思った。

その後、ギリシャ旅行に行った帰り道、スイスのチューリッヒに立ち寄った。その時たまたま画材屋を見つけた。そこで、レンブラントの固形の12色を見つけ買うことにした。当時円高だったため安いのに感激。それ以後はこれをベースにニュートンを補足して使っている。何れも透明感があり気に入って使っている。

■ 筆記用具:
僕は線を生かした描き方が好きである。
そのため、いろんなものを試している。当初はサインペン、ボールペンを使っていたが今は主にステットラーのEBという鉛筆をフォルダーに入れて使っている。(現在はEBは売っていないが8Bと7Bの鉛筆状のものを売っているのでこれがお薦めだ)
サインペンは線がはっきりする点は良いが強弱が出ないという欠点がある。 その点、鉛筆は強弱が出せる。ステットラーのEBの良さ(7B、8Bも同じ)は手があまり黒くならず紙も汚れないこと、普通の鉛筆のような光沢がないことである。
今頃は大きい紙にはステットラーのEB、小さい紙の時はシャープペンシル(0.5、0.7mm)や車中人間スケッチで多用しているボールペンもよい。
今お気に入りのボールペンはJETSTREAM

ドイツ・ロマンチック街道へ行ったとき

ギリシャ旅行で
 南仏旅行で  ■ 水彩紙:
これが一番悩む。
水彩画の場合、紙の選択が一番大切である。紙は色々使ってみて自分に合ったものを探すべきだ。やはり価格の高いものに良い紙がある。着色した時に紙の良し悪しが現れる。
  次にサイズである。
じっくり描く場合は大きめのものが良い。6号、できれば8号がいい。8号を広げ二枚つなげて描くとと16号になる。広々としたところでパッと広げて描くとすごく気持ちがいい。イスタンブールスケッチ旅行からアルシュの半切(12号くらい)を持っていっている。この大きさだと完璧である。
  このサイズ以外にもう一種類いる。
人を描いたり、食い物を描いたりちょっとした風景を描くためのものだ。絵を描きましたではなく、絵を楽しみました、というためには小さいサイズのものをいつも手に持っていることが絶対条件である。
どこでも描く。メモも書く。しかし、これに適したのを売っていない。SMサイズか3号くらいがいいが枚数がせいぜい20枚程度なのがいけない。メモ的になんでも描くには枚数が多く丈夫でなければならない。そして、着色した時も満足できる画質でなければならない。厚いスケッチ帳は紙の質が悪い。仕方がないので1日1冊の割合でもってゆく。
表に絵を描き裏にメモや写真を貼るのも良い。(最近はメモや小さなスケッチ用にF4サイズのスケッチブックを使っている。このサイズだと大判が不要かもしれないと思ったりすることもある。)
 余談ではあるが、このサイズのスケッチブックの表か裏表紙に地図を貼っておくと便利である。その地図に歩いたルートを書き込んだり、位置を確認したりするのに最適である。
  もう一種類持ってゆくとすれば葉書サイズのものだ。
 既製の絵葉書を送るよりも手描きのものを送った方が喜ばれる。旅先で描いたものをプレゼントするのにも葉書サイズのものが手軽でいい.
また、空港ターミナルや飛行機の中など、こっそり描くときにはハガキサイズが便利だ。
 
どの程度の枚数を持ってゆけばいいかいつも迷う。自分のペースを知っていればいいが一日中描いたことがないので心配になる。必要と思われる枚数よりもやや多めに持ってゆく方がいい。
旅先で買えば楽しいなんて書いてあるガイドブックもあるが画材を売っている店などあまりない。時間の余裕もない。日本でも画材屋さんを探すのは大変なのに海外でしかも観光地などで容易に探せるわけがない。しっかり持ってゆくことだ。
衣類なんどは絵を描く者にあまりいらない。紙で荷物が重たくなったくらいがいい

スペイン旅行で
■ パレット、水差し、その他:
とにかく安くて軽いプラスチック製のものにすること。絵の質には関係ないので安物がいい。ここを間違えるといけない。ぶりっ子になる。
もったいぶると絵がだめになる.
  ■ イス
じっくり座って描きたくなるものだ。そして坐ると腹も座るし気持ちも落ち着く。
 携帯用の椅子は是非持ってゆきたいものだ。注意すべきはあまり小さいのは高さが低いので描きずらいことだ。一度座ってみてスケッチのまねをしてみることだ。
■ 絵の道具入れ
 絵の道具を持ち運ぶのは大変である。イスもいるし水もいる。ガイドブックも持っている。
そこでついつい小さなスケッチブックになってしまう。軽く軽くしようとすると、物足りなくなる。そして楽しく描けない。後から大きいのに描けば良かったと思う。しかし肩から架けると重たい。手に持つと両手が使えない。
 これを解決するには、スチュワーデスなどが持っているカートに積み込み引張って歩くことだ。両手は使えるしこの方法に限る。
  恥ずかしいと思うかもしれないが一度したら恥ずかしくもないしやめられない。こんな便利なものはない。
そして、経験から言うと恐いおじさんも寄ってこないし、スリも近寄らない。
■ その他
以上でスケッチの準備は完了。
服装はということになるが、絵描きは世界中みんな貧乏。絵具がついても気にならない服装にすること。できれば画家らしい服装の方がいい。(と言って、ベレー帽は旧い。)
食事に行っても断られることはない。
断るようなところは美味くもないし、行かなければいい。安くて美味いところは地元の人がたくさんいて混んでいるところ。そんなところの料理や人を描くのがまた楽しい。
取澄ましたところでは会話も進まないし楽しいことも起こらない。
 カメラについて書くのを忘れていたが、カメラは持っていった方が良い。
ただ、カメラに頼らないことだ。シャッターを押せばよいだけなのでついつい頼ってしまうが、これは危険。ただ、描きたいなあと思っても団体旅行ではそんな時間のない時もある。また,2,3分のスケッチだけで帰ってから描くということもある。最近はデジカメだから、その画像をベースにホテルで着色することもできる。

これで準備は完了。あとはとにかく目的地に行くだけだ