竹原
広島県竹原市竹原(JR呉線竹原下車)
 5、6年前女房と尾道に行き竹原まで足を延ばした。その時、夜の列車待ちで入った駅前の炉端焼き屋で会った福岡から流れてきたという高倉健そっくりのいい男を思い出す。親戚の人の保証人になり借金を抱えてしまい女房に迷惑をかけたくなくて離婚し、息子と一緒に竹原で建設労務者をしている男が「誠鏡」という竹原の地酒を飲みながらぼそぼそと話していたのを思い出す。演歌の世界を映画にしたような話と雰囲気で、こんな人生もあるものだと思ったことがある。
 そんな町に母の法事で帰郷した時に立寄った。照蓮寺の階段から家並みを描いた。上から見た日本瓦の家並は美しい。大好きなアングルだ。ある種の快感を覚える。鈴木博之が「都市へ」の中で日本の都市と建築の伝統は平面性にあると述べたあと、西欧の建築はファサードによってメッセージするのに対し、日本の建築は屋根によって発していると指摘していたが、まさしく正しいという気になる。
その後、メインの通りをひとかわ入った裏通でもう一枚描いていたら、江戸後期の民家を一部壊して勝手に改修しようとしている人に市役所の町並み保存担当の人がクレームを付け、元の姿に修復をお願いしているのに出会った。どの街でも同じことだが、そこに住んでいる人にとっては自分の住んでいるところの価値がわからないものだ。

竹原
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